顧客の声をサービスに活かし、感動を生み出すコンタクトセンターへ
加盟店、ユーザー、配達員、すべての顧客対応を管掌するコンタクトセンター部。2023年よりCS領域を牽引してきた坂元さんは今、さらなる「感動体験」の提供に挑戦しています。顧客の声を大切にしながら進化を続けてきたコンタクトセンター部の軌跡と、描いているビジョンについて伺いました。
坂元 駿志
CX本部 コンタクトセンター部 部長
新卒で飲食業界に就職した後、人材会社に転職し、新卒採用に特化した企画営業職を経験後、2015年に出前館に入社。大阪での新規顧客獲得営業を皮切りに、大手チェーン向けの営業やマーケティングを経験し、エンタープライズ営業の部長へ。2023年にはCX本部に異動し、コンタクトセンター部の部長に着任。子会社である株式会社出前館コミュニケーションズの代表取締役も務める。
入社から10年を迎える現在も、成長し続けるビジネス
── これまでのご経歴を教えてください。
飲食業界で1年、人材業界で営業を2年半経験した後に、出前館に入社しました。大阪で新規顧客の獲得営業に従事してから、東京に転勤し、大手チェーン向けの営業やマーケティングに従事。エンタープライズ営業の部長を経て、2023年3月にCX本部のコンタクトセンター部の部長となりました。
また、同年11月からコンタクトセンターを運営している子会社の株式会社出前館コミュニケーションズの代表取締役にも着任しました。
── 元々、飲食業界からキャリアをスタートされているのですね。
はい。いずれは飲食店を自分で経営したいという思いがあり、これまでのキャリアを歩んできました。しかし、現在は出前館のビジネスそのものに強い魅力を感じているため、その夢はどこかに消えてしまいました。
── 坂元さんが出前館に感じている魅力とは、何でしょうか?
日本のデリバリー市場はコロナ禍を経て大きく拡大しましたが、まだまだ発展途上にあります。現在もなお大きな可能性が広がっており、今後もさらに成長していくと私は確信しています。
日本企業としてデリバリー業界をリードしてきた出前館が、これからもその成長を推進していけること。出前館の一員として成長の一翼を担えることが、私にとって大きな魅力となっています。
これからどんな世界が見れるんだろうと思っているうちに、いつの間にか10年目に突入していました(笑)。
── 坂元さんが部長を務めるコンタクトセンター部とは、どういった部門でしょうか?
コンタクトセンターの品質向上のため、施策をリードするポジションです。実際の応対はBPO(専門業者に外部委託すること)の管轄ですが、コンタクトセンターの改革、改善、社内外の各部門との連携は、我々が担当しています。
分析やコストコントロール、応答率・平均応答時間の改善、オペレーション改善、エスカレーション対応など、業務内容はさまざまですが、特に重視しているのはVOCの反映です。お客さまの声を1番聞いている私たちだからこそ、その声をサービスに活かしていくことを何よりも大切にしています。
出前館の成長には、顧客体験の向上が欠かせない
── コンタクトセンター部のミッションについて教えてください。
私たちのミッションは、「お客さまが困っているときに、いかに早く、簡単に解決できるかを目指す」ことです。出前館は、注文から平均30分以内に商品をお届けしている、スピード命のサービスだといえます。空腹で待ってくださっているお客さまの問い合わせに対して、次の日に対応するというのは、あってはならないこと。
迅速な対応は、顧客満足度を高めるだけでなく、出前館という企業としての信頼を築くことにもつながると感じます。
── コンタクトセンター部が立ち上がった背景は何でしょうか?
出前館の成長には、単に売上を伸ばすだけでなく、CX(カスタマー・エクスペリエンス)という顧客体験の向上が欠かせないものであるという価値観が背景にはあります。
コロナ禍によりデリバリーサービスの需要が急増したことで、2020年から2022年初夏にかけて、出前館の存在感は一層高まりました。しかし、CXの成長については、必ずしも同じスピードで進んでいたわけではありませんでした。
当時、加盟店とユーザーの対応は営業部門が担当し、配達員の窓口はシェアリングデリバリー部門が管轄していました。つまり、加盟店、ユーザー、配達員の三者に対して、一貫して責任を持つ部門が存在していなかったのです。そのため、「三方よし」のルールを設計し、適切に運用することが難しく、顧客満足度を高めるのが容易ではない状況でした。
そこで、全ステークホルダーのCX向上を担うCX本部が2022年9月に新設され、その中の部門としてコンタクトセンター部が誕生しました。CX本部、そしてコンタクトセンター部の立ち上げにより、三者すべてに対して統一されたサポートを提供し、出前館のCXをより一層強化する体制が整ったのです。
── 加盟店、ユーザー、配達員すべてに対する「三方よし」の体制が作れるようになったんですね。
そうですね。ただ、「三方よし」と言葉にするのは簡単ですが、実際に実現するのは非常に難しいことでした。なぜなら、1つのルールを変更するだけでも、すべてのステークホルダーに影響を与える可能性があるからです。
そのため、配達の現場に詳しいメンバーや、ユーザーや加盟店に精通したメンバーに集まってもらい、それぞれの視点からオペレーションの課題をヒアリングしました。その上で、最適な方法を見つけ出しながら、一歩一歩体制を作り上げていきました。
コンタクトセンターは、究極の営業である
── 組織としての基盤を整えた後、どういったプロセスを歩んでいきましたか?
最初の段階では、私たちのミッションである「いかに早く、簡単に解決できるか」という目標にはまだ十分に取り組めていませんでした。例えば、当時は顧客からいただいた問い合わせの電話に応答するまでに5分近くもお待たせしてしまうなど、顧客にとって満足できる体験が提供できているとは言い難い状況だったんです。
そこで、インパクトのある取り組みとして、問い合わせフォームの開発プロジェクトに着手しました。これまではメールのやりとりに時間とコストがかかっていたのですが、フォームで証跡などの情報を送信できるようになったことで、スピーディーに対応できるようになりました。
課題を見つけ出し、行動し、結果を検証するという地道な作業の繰り返しにより、コンタクトセンター部として徐々に成果を出せるようになっていったのです。
── 具体的に、どのような成果を出せたのでしょうか?
コストは約半減、顧客満足度は向上という成果です。顧客対応の品質を高めるためには、単に人を増やせばいいというものでもありません。何が課題なのか、現状の数字はどうなのか、そもそもの仕組みに改善の余地はないか、あらゆる方向から改善を進めることが必要です。
── 問い合わせフォームのように、効率化・自動化も重要な改善ポイントとなるのでしょうか?
おっしゃる通りで、単純な処理や返金、メールの送信といった業務はどんどん自動化することが可能ですし、その速さに感謝されることもあると思います。しかし、企業やサービスの本当の魅力は、誰が、どれくらい心を込めて対応しているのかにも表れると考えます。AIや自動化の時代だからこそ、人として真摯に向き合っていくことが大切だと私は思うのです。そういう意味で、コンタクトセンターこそ、究極の営業だと感じています。
── 究極の営業とは、どういったことですか?
通常の営業は、フラットな環境でお相手と直接顔を合わせて話しますよね。コンタクトセンターでは、何かしらお困りごとがある状態やご不満を抱かれた状態、いわばこちらが劣勢の状態からコミュニケーションが始まることが多いです。
また、基本的にお会いすることはないため、お相手の表情がわからない分、お電話口での声やメールやチャットの本文からご要望の芯の部分を読み取ったうえで、スピード感のある対応や適切なご説明、時には謝罪を行うことが必要です。
もし「感動体験」をお届けしようとするならば、このような場面でも最後には「ありがとう」と言っていただくために、お相手の想像を超える対応が必要になります。
劣勢な状況からでも、お客さまの期待を超えるサービスを提供すること。それこそが、コンタクトセンターの真の価値であると考え、私自身が営業出身であることから「究極の営業」というワードで表現しています。
顧客の声をサービスに活かす、次世代型コンタクトセンターを目指して
── 出前館のコンタクトセンター部だからこそ得られる経験や成長はありますか?
スピードが求められるeコマース領域で、顧客が3者(加盟店、ユーザー、配達員)いるという特異なビジネスモデルを経験できます。こうした環境は非常に珍しく、コンタクトセンター自体もまだ発展途上なので、自分自身で新しい仕組みやプロセスを作り上げるチャンスが多くあります。ビジネスに大きなインパクトを与える機会があり、自身の成長や自信にもつながると思います。
また、CX・CS領域に力を入れている会社で働きたいと考えている方にとっても、出前館はマッチする環境だと思います。企業によっては、CSが直接的な売上に結びつかない部門として軽視されることもあると聞きますが、出前館ではそのような文化は一切ありません。むしろ、顧客体験を重視する姿勢が全社的に醸成されています。これまでの経験を存分に活かし、気持ちよく働いていただける環境が、出前館にはあるはずです。
── コンタクトセンター部では、どんな方が活躍できると考えますか?
コンタクトセンター部に限ったことではありませんが、いかに相手目線を持って、最後までやり切れるのか、ということに尽きるんじゃないかと思います。現在集まっているメンバーも、各ステークホルダーに対して「自分たちに何ができるか」を常に考えているメンバーばかりです。相手目線がなければ、社内外を巻き込む際にも、独りよがりになってしまい、うまく物事を進められないのではないかと思います。
また、できない理由より、できる方法を一緒に考えていける方のほうが、このチームでは活躍できると感じます。
── 坂元さんの今後の目標について教えてください。
出前館のコンタクトセンターを、単なる顧客対応窓口ではなく、「感動の体験」を提供できるセンターに育て上げることです。顧客からのフィードバックを真摯に受け止め、サービスやプロダクトに反映させることで、さらに素晴らしい体験を提供していきたいです。私たちはそれを「次世代型コンタクトセンター」と呼んでいます。
現在、次世代型コンタクトセンターの理想像に対して、進捗はまだ30%ほどという感覚です。顧客の声に最も近い環境にある私たちだからこそ、その声をサービスに活かし、「出前館のコンタクトセンターは本当に良いよね」と言っていただけるまで、さらに成長を続けていきたいです。
取材・執筆/早坂みさと