出前館の成長の鍵は「顧客の声」にある。UXリサーチグループの果たす役割
リサーチを通して、顧客体験の向上を目指すUXリサーチグループ。
今回は、グループの立ち上げを推進し、10年以上培ったリサーチのスキルを日々発揮する松田さんにインタビューしました。ユニークなビジネスモデルであるがゆえに、他にはない経験が出前館では積めると語る松田さん。UXリサーチグループ立ち上げの軌跡と、松田さんが感じているやりがいについて伺いました。
松田 和也
CX本部 CX戦略部 UXリサーチグループ
2023年7月入社。前職ではマーケティング支援会社でリサーチ業務を中心に従事。一人目のリサーチ経験者として入社後、UXリサーチグループの立ち上げを推進。マネージャーとして、組織マネジメント、リサーチ業務のリード、リサーチ文化の社内醸成に注力する。
マーケティング支援会社から事業会社への転向
── 出前館に入社するまでの背景を教えてください。
前職はマーケティング支援会社で、10年以上リサーチ業務を行っていました。商品やサービスが世の中に出る前のニーズや課題の調査、世の中に出た後の商品の認知度や評価、広告の効果測定など、マーケティングにおけるリサーチ領域を支援する仕事でした。
この仕事にはやりがいを感じていましたが、支援者という立場ゆえに、調査結果がどのように活用され、具体的に事業にどう貢献しているのかが見えにくい部分もありました。そのため、次第に「一度事業会社に入り、リサーチがどのように事業に役立っているのかを自分の目で確かめたい」という思いが芽生えていきました。
支援者から事業者へと新たなフィールドを求める中で、出会ったのが出前館の求人でした。以上が「リサーチプランナー」というポジションに興味を持ち、選考を受けた背景です。
── 事業会社の中でも、なぜ出前館を選んだのでしょうか?
他にはないビジネスモデルに魅力を感じたからです。出前館のステークホルダーは、出前館を利用するユーザー、料理を提供する加盟店、料理をデリバリーする配達員の3者で構成されています。エンドユーザーのみを調査の対象とする企業が多い中、出前館では3者すべてが調査の対象です。これまで培ってきたリサーチスキルを存分に発揮できる環境が出前館にはあると感じ、入社を決意しました。
── 松田さんが入社する以前から、出前館ではリサーチを重視していたのでしょうか?
リサーチ活動は行われていましたが、リサーチを行う部署自体があるわけではありませんでした。
しかし、2022年にCX本部が誕生したことで、リサーチの重要性が改めて見直されました。顧客体験を高めるためには、リサーチを通じて我々自身がユーザーを深く理解することが不可欠だからです。
そこで、リサーチのバックグランドを持つ専任者が募集され、1人目のリサーチ経験者として、私が入社する運びになりました。社内からもメンバーが選ばれ、2023年9月にUXリサーチグループとして本格的に活動を開始しました。
改善と提案を繰り返しながら、ビジネスに長期的に貢献
── 入社してすぐにUXリサーチグループを立ち上げたのですね。これまで、どのようなことに取り組んできたのか教えてください。
最初は、まさにゼロからのスタートでした。リサーチの手法やオペレーションの整備など、すべてが手探りの状態で、まずはその基盤を築くことから始めました。立ち上げメンバー3人で力を合わせ、「このスケジュールで問題はないか」「他部門との情報共有をどうスムーズに進めるか」「データをどのように取得するか」といった課題を一つひとつ解決していきました。
オペレーションの構築は大変でありましたが、少しずつ仕組みが整い、スムーズに業務を進められるようになっていきました。リサーチ活動に本格的に取り組む下準備ができたのです。最初は私たちで企画した調査を行っていましたが、次第に他部署と連携する調査も増えていきました。
── 具体的に、どのような調査を実施しているのでしょうか?
出前館に関わる3つのステークホルダーであるユーザー、加盟店、そして配達員に対して調査を行っています。アンケートやインタビューを通じて、各ステークホルダーが何を求め、どのような満足度なのかを理解し、その結果をレポートとしてまとめ、関連する部署に提供しています。
他部署との連携では、例えば、プロダクト本部と協力してリニューアルされたアプリについて調査を行いました。ユーザーにどのように受け入れられ、使いこなされているのか、満足度はどうかという点についてユーザーの声を拾い上げ、アプリの改善に繋げました。
また、営業本部と連携し、加盟店に対するサポートの満足度調査も実施し、現状のスコアや顧客からのフィードバックを整理して提供しました。リサーチを通して、改善活動に役立てていただけるように努めています。
── 松田さんはマーケティング支援会社から事業会社に転向されましたが、どのような変化を感じていますか?
リサーチのプロセスや幅が大きく変化しました。支援会社にいた頃は、クライアントから課題をヒアリングし、調査を設計していく流れが基本でした。私たちの役割は、調査結果を報告するところまでで、その先の活用や実行には直接関与しませんでした。
しかし、出前館に転職してからは、まったく違ったアプローチが求められるようになりました。出前館では、あらかじめ明確な課題があるケースばかりではなく、むしろその課題を自分自身で発見するところから始まることもあります。
何が問題なのかを見つけ出し、調査を行い、その結果を関連部署に共有。その後も、改善がどのように進み、ユーザーからどのような評価を受けたのかを継続的に追っていきます。報告したら終わりではなく、改善と提案を繰り返しながら、ビジネスに長期的に貢献していく。そこが支援会社からの大きな変化であり、私自身が面白さを感じている部分です。
リサーチを通して、顧客満足度向上の立役者へ
── 改めて、リサーチの観点から見た出前館の魅力はどこにあると感じますか?
入社理由とも重なりますが、複数の視点でリサーチに取り組めるのは魅力だと感じます。通常のリサーチでは、特定のステークホルダーに焦点を当てることが一般的ですが、出前館の場合は、ユーザーだけでなく、加盟店や配達員の視点も重視しながらリサーチに取り組んでいます。多角的に物事を捉え、3者すべての視点から最適なバランスを探し出すことが求められるのです。
例えば、ユーザーの満足度を向上させるだけでは、加盟店や配達員の業務に負担がかかり、結果的に全体のバランスが崩れてしまう可能性があります。一方で、加盟店に焦点を当てすぎると、他のステークホルダーの満足度が低下するリスクもあります。ユーザー、加盟店、配達員という3者で形成される「三角形」をいかに美しく、そして大きく保つのかが重要なポイントです。
三角形のバランスを最適化するために、リサーチの力をフルに活用していく。この挑戦こそが、出前館でのリサーチの最も大きな魅力ではないでしょうか。
── 特にやりがいを感じたエピソードを教えてください。
顧客の満足度向上に貢献できた瞬間に喜びとやりがいを感じました。出前館では定期的に顧客の満足度調査を行っていますが、初期の調査では、正直なところ満足度の評価はそれほど高くはありませんでした。しかし、社員一人ひとりが調査結果を真剣に受け止め、改善のための具体的なアクションに結びつけていったことで、調査回数を重ねるごとに満足度が上がっていきました。
リサーチがしっかりと機能して、結果を踏まえたアクションが確実に実行されているからこそ、こうした成果が生まれたのだと実感しています。
── どのような方がUXリサーチグループで活躍できると感じますか?
現在のUXリサーチグループは、立ち上がって間もないため、非常に自由度が高い環境です。その一方で、組織としてはまだ成熟しきっていない部分もあり、確立されたルールや枠組みが少ないのも事実です。そのため、自律的に思考し、行動できる方がマッチすると感じますし、現メンバーもそういった方々が揃っています。
私自身、がっちりとマネジメントするタイプではなく、フラットな関係性を大切にしたいタイプです。自分の意見を持ちつつ、チームの一員として自律的に取り組める方は、UXリサーチグループで活躍できると思います。
チャレンジ精神の強い組織で、リサーチ文化の浸透を目指す
── 出前館全体のカルチャーとして、どのような特徴があると感じていますか?
出前館全体を見渡すと、この規模の組織としては珍しいほどチャレンジ精神が強いと感じます。一般的に、組織が大きくなると、どうしても保守的になったり、業務がマニュアルに縛られたりすることが多いように思います。出前館は上場し、組織の規模も大きくなり、売上も一定の規模に達していますが、それでも保守的にならず、新しいことに挑戦するカルチャーがしっかりと維持されていると感じます。
── 働き方についてはいかがでしょうか?
出前館に入社してまず驚いたのが、その働き方のスタイルです。残業を前提とした労働ではなく、業務時間内に成果を出すという価値観がしっかりと根付いています。そのため、皆さんバランスの取れた働き方を実現していると感じます。
さらに、職種によって自由度に違いはありますが、出前館ではフレックス制度が導入されているため、自分のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができるのも良いところだと思います。
── 松田さんの今後の目標についても教えてください。
UXリサーチグループの組織としての成熟度を高めるとともに、リサーチ文化を広げていくことを目指しています。何件かは他部署と連携したリサーチの事例が出てきていますが、まだまだケースとしては多くありません。他部署の課題をヒアリングして、我々から役に立つ調査を提供することで、リサーチ文化をさらに組織に浸透させていきたいです。
取材・執筆/早坂みさと